KBCラジオ「5分間の税金話 私の隣の税理士さん」

  • 第19回:平成23年2月1日放送分

雑損控除

  • 沢田 :このコーナーでは、現役の税理士さんにスタジオに来てもらいまして、税金のことはもちろん、起業や相続、不動産といった専門的な話ですとか、実際に、税理士さんがどんな仕事をしているのかなど、毎週火曜日にうかがっています。
    今日は、「九州北部税理士会」所属の税理士、川野秀明さんにお越し頂きました。川野さん、よろしくお願いします!
  • 沢田 :今日は、相談を頂いていますので、川野さんにお伺いします。
    北九州市のダンディさんという男性からですが、「去年、僕の友人が車上荒らしにあい、車内に置いてあったバックや財布などを盗まれたんです。こんな被害にあった場合、税金の計算で何かしてもらえたりするんでしょうか?」というメールなんですけど…
  • 川野 :それは災難でしたね。このような災難を受けた場合、実は、「雑損控除」という規定で、税金を安くすることが出来る場合があります。
    まず対象となるのが、災害、盗難、横領という3つがキーワードになります、これらの事由により被害を受けた場合には、その被害を受けた年の所得の金額から、被害を受けた金額を控除することが出来るんです。
  • ナカジー:ということは、車上荒らしで、財布を盗まれたわけですから、盗難ということで、雑損控除の適用があるんですね。
  • 川野 :はい、雑損控除の適用は受けられると思います。
  • ナカジー:どうやって計算するんですか?
  • 川野 :この計算が結構大変なんですが、ラジオですから簡単に説明します。損失を受けた金額、ですから今回の車上荒らしの場合は、車上荒らしにあって盗まれた財布の中のお金の金額になりますね、この盗まれた金額から、その方の総所得金額の10%を引いた金額が雑損控除の金額となるのです。
  • ナカジー:ちょっと、待ってください? いくらですか?
  • 川野 :例えば、被害を受けた年の所得の金額が300万円だったとします。この場合は、被害を受けた金額が、300万円の10%、つまり30万円以上ないと、残念ながら雑損控除の金額はないということになるんですね。
  • ナカジー:財布の中には、10,000円しか入っていなかったとしたら?
  • 川野 :それでは無理ですね。ですから、雑損控除の適用で多いのは、災害により住宅や家財に被害を受けた場合になります。最近では、集中豪雨や台風といった自然災害によって、住宅や家財に被害を受けた場合に、この雑損控除を受ける方が多くなります。
  • 沢田 :たしかに、最近の集中豪雨とかとんでもない被害を出すことがありますもんね。
  • 川野 :この場合に対象となるのは、住宅や家財等の生活資産です。生活に通常必要でない資産の損害は対象となりません。
  • 沢田 :何ですか、その生活に通常「必要でない」資産という不気味な言い回しは?
  • 川野 :別に不気味な言い回しとは思いませんが、生活に通常必要でない資産とは、趣味、娯楽、保養、鑑賞の目的で所有する資産で、具体的には別荘やヨット、時価30万円を超える宝石や書画骨董品などです。
  • ナカジー:なるほど、それは確かに通常の生活には必要でない資産ですね。
  • らぶ子 :川野さん、この雑損控除の適用を受ける場合には、何を用意すればいいのでしょうか?
  • 川野 :この雑損控除は、確定申告をすることによって受けることが出来る規定なんです。
    そして、その申告の時には、災害を受けたことを証明する書類の添付が必要となります。
    例えば、盗難にあったときは、警察への被害届。火災にあった場合には、消防署からの罹災証明書。台風や水害などの自然災害の場合には、市町村が発行する罹災証明書などが必要となります。又、災害が確認できる写真などがあると、分かりやすいですよね。
  • 沢田 :最近、社会問題になっている、振り込め詐欺にあった場合も、この雑損控除の適用は受けられるんでしょうか?
  • 川野 :残念ながら、それは雑損控除の対象にならないんですよ。
  • ナカジー:えっ、駄目なんですか?
  • 川野 :あくまで雑損控除は、災害、盗難、横領による被害を対象にしていますので、詐欺は対象にならないのです。ただ、これについては、私も国がどうにかしてくれないかとは、個人的に思っています。ただ、現在の法律では、詐欺による被害は適用は受けられません。とにかく、雑損控除という規定は、その適用判断が大変複雑ですから、自分で判断せずに、少しでも適用が受けられそうと思ったときは、我々税理士に相談されることをお勧めします。
    それからお知らせがあります。今日、2月1日に福岡市中央区天神の福岡ビル9階に「税理士会による申告相談センター」が開設されましたので、是非ご利用ください。
  • 沢田 :このコーナーでは、税金について税理士さんにいろいろとお話を伺っています。
    また、税理士さんに質問などがありましたら、パオーン宛に送ってください。
    九州北部税理士会のホームページもありますので、一度、ご覧下さい。
    スタジオには、九州北部税理士会の税理士、川野秀明さんでした。ありがとうございました。
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