KBCラジオ「5分間の税金話 私の隣の税理士さん」

  • 第23回:平成23年3月1日放送分

株式の譲渡と配当

  • 沢田 :このコーナーでは、現役の税理士さんにスタジオに来てもらいまして、税金のことはもちろん、起業や相続、不動産といった専門的な話ですとか、実際に、税理士さんがどんな仕事をしているのかなど、毎週火曜日にうかがっています。
    今日は、「九州北部税理士会」所属の税理士、川野秀明さんにお越し頂きました。川野さん、よろしくお願いします!
  • 沢田 :さて、川野さん、今日はどんなお話しでしょうか?
  • 川野 :今日は、個人の方が株式を売却した場合に生じる税金と株式を持っているときに受け取ることができる配当金についてお話ししたいと思います。
  • 沢田 :たしかに、株で利益が出たと思っても、税金が心配ですよね?
  • 川野 :そうですね。株式もいろいろな種類に分けられるのですが、今日はその中でも上場株式等の譲渡と配当金についてお話ししたいと思います。まずは上場株式等の譲渡についてですが、前回私がお話しした土地や建物を売却したときに売却益が生じた場合には、給料や商売の所得と区別して、所得税や住民税の計算する「分離課税」を思い出してください。株も同じことで、事業で赤字が出たとしても、上場株式等を売却して儲けた利益とは相殺してくれないということです。反対に、上場株式等を売却して損した場合も、事業の儲けや、給料の所得と相殺出来ません。他の所得と分けて税金を計算しますので、分離課税と呼ばれています。
  • ナカジー:上場株式を売って儲けた場合は、どのくらい税金がかかるのですか?
  • 川野 :上場株式等を売ったときの儲けに対する税率は、原則20%で、5年を超えて不動産を売却して儲けた場合の税率と同じですが、証券会社等を通じた譲渡など特定の譲渡による上場株式等の儲けに対しては大きく税率が変わるのですが、質問です。らぶ子さん、どちらの方が税金が高くなると思いますか?
  • らぶ子 :えーっ、また私に聞くんですか? また勘で答えますけど、証券会社で売った方が税金は、安くなる。で、どうですか?
  • 川野 :正解です。証券会社等で上場株式等を売却して儲けた場合は、その儲けた金額の10%の税金が発生します。
  • ナカジー:10%? 半分ですか!!
  • 川野 :はい、ただしこれは平成23年12月31日までの取引についての特例です。今後の税制改正によっては延長もあり得ますのでご注意ください。また、不動産の譲渡と同じですが、あくまで上場株式等を売って儲けた場合に、その儲けた金額に対して税金が発生するわけです。ですから、自分が購入した金額よりも高い金額で売れた場合ということが前提です。
  • 沢田 :じゃぁ、もし自分が購入した金額よりも安くでしか売れなかった場合にはどうなるのですか? ほかにある株では儲かったけど、ある株では損したなんてこともあると思うんですけど?
  • 川野 :はい、例えば、沢田さんはA株では100万円儲けて、B株では60万円損したとします。その場合は、差し引きの40万円が課税対象になりますので、税金は4万円になります。
  • 沢田 :なるほど~。
  • 川野 :中島さんはC株で10万円儲けたけどD株では90万円損したとします。その場合は80万円損したことになりますので、申告しないこともできるのですが、損していることを申告することで、翌年か翌々年か翌々々年の3年間に上場株式等を売ったときに儲けが出たら、その儲けと80万円を相殺することができるんです。
  • ナカジー:ほうほう。損しても申告していれば、得することもあるんですね。
  • 川野 :ただし、注意しなければいけない点があります。損と儲けを相殺するためには、連続して申告することが必要になります。損していることを申告した翌年に上場株式等を売っていないからといって何もしなかったら、翌々年に儲けが出ても相殺してくれません。
  • ナカジー:それは、気をつけないといけないですね。
  • 川野 :次に、上場株式等の配当金ですが、これらからは源泉所得税が徴収されています。税率は、原則20%ですが、平成23年12月31日までの間、源泉徴収税率は、10%の優遇税率が適用されます。この優遇措置も、延長されるかもしれません。
  • 沢田 :これも是非延長してほしいですね。気をつけときましょう。
  • 川野 :上場株式等の配当金については、特別な場合を除いて1銘柄につき1回に支払いを受ける金額の多少にかかわらず、確定申告を不要とすることができます。
  • らぶ子:えっ? 申告しなくてもいいんですか?
  • 川野 :上場株式等の配当金について申告する場合は、総合課税または申告分離課税のいずれかを選択することができます。総合課税を選択すると配当控除という税額控除の適用を受けることができます。また、申告分離課税を選択した場合は、先ほどお話しした上場株式等を売却した際に出た損と通算を行うことができます。
  • ナカジー:ちょっと複雑ですよ~!
  • 川野 :そうなんです。上場株式に関する税制は非常に複雑で、必ずいくつかのパターンを検証してみないと、どのようにすれば税金が少なくすむのか解らないのです。売った後はもちろんですが、売る前にも、我々税理士に相談されることをお勧めします。
  • 沢田 :このコーナーでは、税金について税理士さんにいろいろとお話を伺っています。
    また、税理士さんに質問などがありましたら、パオーン宛に送ってください。
    九州北部税理士会のホームページもありますので、一度、ご覧下さい。
    スタジオには、九州北部税理士会の税理士、川野秀明さんでした。ありがとうございました。
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