平成22年度税制改正大綱において、特殊支配同族会社における業務主宰役員給与の損金不算入制度の廃止が決まる。

 平成21年12月22日(同月25日一部改正)に閣議決定された平成22年度税制改正大綱において、本会がかねてより「税制改正意見書」で廃止を求めていた「特殊支配同族会社における業務主宰役員給与の損金不算入制度」の廃止が決まりました(改正大綱の17及び45頁参照)。

 本会では下記の理由により、平成19年度税制改正意見書以来一貫して、特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入規定の廃止を求めてきましたが、今般実現の運びとなりました。平成22年4月1日以後終了事業年度からの廃止となりますが、詳細については、まだ不明な点が多々有ります、今後の動向に注目してまいります。

 

≪理 由≫ (九州北部税理士会税制改正意見書より抜粋)

 法人が役員給与を支給した場合には法人の純資産が減少するのであるから、役員給与は法人の費用であり、担税力の減少項目であると

える。すなわち、役員給与の一部を損金不算入にすることは、喪失した担税力に課税するものである。

 一方、役員給与を受けた個人においては、役員給与額から給与所得控除額が控除される。この給与所得控除相当額を法人段階で損金不算

入にすることは、本来個人所得税の控除額を法人税の課税対象にすることになる。したがって、本規定は、人格を無視し、所得税と法人税を混

同したものといわざるをえない。

 また、役員給与は特定の同族会社のみが支払うものではなく、同族会社以外の法人においても同様に支払われるものである。仮に、給与所

得控除額が「経費の二重控除」になるのであれば、特殊支配同族会社以外の法人にも「経費の二重控除」が生じていることになる。このことか

このように不合理な特殊支配同族会社のみを対象とした当該規定は、著しく公平性を欠くものと考えられる。

 したがって、特殊支配同族会社の役員給与損金不算入規定は直ちに廃止すべきである。

 

 また、会計検査院の平成20年度決算検査報告で、適切な措置を講ずる旨の意見を表示された「賃貸マンション等の取得に係る消費税額の納付について」も改正され(改正大綱の78頁参照)、いわゆる「自販機設置による、賃貸住宅の建築資金に係る消費税の還付」の租税回避行為は、平成22年4月1日以後に課税事業者選択届出書を提出した事業者の同日以後開始する課税期間から規制されます。今後の賃貸住宅建築資金計画に、多大な影響が生じると思いますので、ご注意ください。

 その他、小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の見直し(改正大綱の58頁参照)、定期金に関する権利の評価方法の見直し(改正大綱の70頁参照)等々、新聞・テレビ等で報道される項目以外の項目にも注目してまいります。

 

 なお、本会では税理士法第49条の11(建議等)に基づき、税理士及び税理士会がその公共的立場と使命に基づき、税務の専門家として、税務官公署に対し、税制及び税務行政の改善について提言すべく「税制改正意見書」を、税制調査会等の税制改正に関する動向、本会会員からの意見、過去の税制改正意見書及び日本税理士会連合会の税制改正に関する建議書等を参考に、毎年取りまとめています。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

   税理士法

   第49条の11(建議等)

     税理士会は、税務行政その他租税又は税理士に関する制度について、権限のある官公署に建議し、又はその諮問に答申することが

       できる。

コメントは受け付けていません。